人間の腕は握手の形が最も自然な姿勢といわれている。車のハンドルやゲームのコントローラー、飛行機の操縦桿なんかもこの向きで握るためちゃんと人間工学的な、いわゆるエルゴノミクスな設計になっている。
PCマウスに縦型のものがあるのも納得できる。しかしPCキーボードはというとどうだろうか?平らな一枚板で腕を伏せて巻き肩気味に配置しており、人間工学的にはイマイチな姿勢。
そこに疑問を感じ対策を色々試した結果、とても楽に使用でき肩こりや腱鞘炎とはオサラバできそうな結論にたどり着いたので共有したいと思う。
一般的なキーボードは全くエルゴノミクスではない

市販のものやノートPCのキーボードに疑問を感じたことはないだろうか?まず横一列ごとに少しずつズレている配列、これはロースタッガードと呼ばれている。
元々タイプライターが上の画像の様に全てのボタンが本体上部から棒でつながっているため、下のボタンにいくにつれて上のボタンと構造上重なることができないから横にズレていた。
そのため打ちやすいわけでもエルゴノミクスでもない配列なのに、それをなぜかそのまま移植し現在に至ってしまった模様。
英字や記号の並びも結構適当に決められたらしく(左上のアルファベットをとってQWEARTY配列と呼ばれている)、日本語はもちろん英語も別段打ちやすいわけでもないとのこと。
確かに特に日本語だと同じ指で打ったり特等席のFやJが頻度低すぎる。今や指の負担が少なくかつ打ちやすい配列が生み出されており、QWEARTY配列の半分の指の移動距離で済む配列まである。
それでも適当だったとしても最初に決めてしまったものが広く普及し当たり前になり、一種の既得権益状態なのが現状だ。
自作分離キーボードを使おう
そこで体に負担しかないキーボードから乗り換えるのにおすすめなのが、指の曲がる方向に合わせた横ではなく縦にズレたカラムスタッガード配列で、真ん中で分離したキーボード。
残念ながら市販のメーカー製でこの条件を満たすキーボードは Kinesis Advantage360という最低でも8万円を超えるものしか見つからない。
分離してるだけならあるが、横ズレタイプライター配列なのでイマイチ、そのため実質自作キーボードというジャンルになる。
自作キーボードとはその名のごとく基本的に個人の方が設計して販売しているもので、市販品と異なり自分で組み立てるものが一般的。
しかし自作キーボード界隈も今やネジ止めするだけで完成するお手軽なものが増えており、商品によってはハンダ付けなどを代わりにやってくれるサービスもある。
そんな中個人的におすすめなのが以下のCorneシリーズだ。

今や4号機のCorne V4が昨年発売し、ボタンのカスタマイズも自由で長押し単推しで別ボタンにしたりショートカットの組み合わせを1つのボタンに登録したり、キーマップは6層もあるのでボタンはありあまりホームポジションから動かさず全てのキー入力が可能。
好みのキースイッチを付け替え自由で光る、両端の1列は切り離し上の写真のようにコンパクト化することもでき、僕はメルカリで購入したケースを装着して使っている。とてもいたせりつくせりなキーボードだ。
QWEARTY配列以外を使おう
先程取り上げた忌むべき存在のQWEARTY配列。こいつに変わる合理的な配列は1932年に発案されたDovorak配列に始まり、今も有志たちによって日々生み出されている。
僕は色々試した結果、デザイナーの大西琢磨さんが考案した大西配列に落ち着いた。
ちなみに自作キーボードはキー配列も細かく編集でき、長押しと短押しで異なる機能を持たせられるので、ホームポジションの特等席にShiftを持ってくることも可能だ。

この配列は母音が左側にまとまり、ザ行やヴァ行以外は左右交互に打てるのでそれだけでかなり速く打てる。
ーが打ちやすい位置にあるのも地味に良いし、指の移動距離が統計的にQWEARTY配列の半分になるらしく、それだけでマスターするしかないと思って導入しこの記事も大西配列で執筆している。
仕事環境などで導入が難しい場合は仕方ないが、将来への投資と思って可能な方は挑戦する価値が大いにあると感じている。
小型分離キーボードは垂直に立てよ
ここでようやく本題に入る。冒頭で言ったように、握手の形が人体にとって自然で優しいのなら、その状態でキーボードも打てたら最強ではないかということで実践することにした。

分離キーボードを立てた状態がテントのようにハの字になることから、界隈ではテンティングと呼ばれている。だが垂直に立てるのはもはやテンティングではないが、最も体に負担がないと感じている。
やり方は簡単で、用意するものはAmazonで手に入るシールで装着するスチールプレートと、スマホ用のマグネットスタンドだけ。写真のようにスチールプレートをキーボード裏面に貼り付け、マグネットスタンドをいい感じにつけるだけ。
より安定感を高めるために立てたときの底面にGRIPLUSという滑り止めシールを貼っている。これに慣れると90度未満のいわゆるテンティングはあまり効果的とは感じなくなる。マグネットスタンドは磁力が強過ぎて他の電子機器を壊されても困るので、海外ではなく日本メーカーのものを選んだ。
写真のエツミ マグスタンドはマグスタンドが強すぎず弱すぎず、スチール製なため重く安定性も高くコンパクトなので個人的におすすめ。

快適に健康にキーボードを使おう 費用は先行投資だ
キーボード本体17600円、スイッチ6545円、キーキャップ2800円、間を繋ぐTRRSケーブル586円、マグネットスタンド2つ5360円、スチールプレート555円で計33446円と高級キーボードレベルの出費だった。
しかし高級キーボードのHHKB Professional HYBRID Type-SやHHKB Studio、REALFORCE GX1など使ってきて、それらを超え得る快適性と負担の少なさを実感している。キーボード本体は遊舎工房というところで販売しているので、興味があったらぜひ試してほしい。